この記事では、個人事業主の税務調査で、よく聞かれる質問をまとめていますので、参考にしてください。事前に回答を準備しておくとスムーズに対応できますよ。
これまでの職歴に関する質問
税務調査では、まず、あなたの学歴や職歴を聞かれます。私の場合もそうでした。履歴書を出してくださいとは言われませんでしたが、口頭でよいので、高等学校から現在までの学歴と職歴を話してくださいと言われました。
ほとんどの国税調査官は、事前に年金記録などを取り寄せて対象者の経歴を調べています。年金記録には、過去の会社名も記載されるからです。そうした事前調査をしたうえで、あなたに質問をしてきます。ですから、ここは正直に伝えましょう。
この時点で嘘は絶対にだめです。その後の心証がかなり悪くなるからです。
この質問をすることで、国税調査官は、あなたの経歴だけでなく、能力や正確、人となりを判断しています。
事業内容に関する質問
事業内容に関する質問もよく聞かれますね。今の事業だけでなく、過去の事業についても聞かれることがあります。また、複数の事業を行っている場合、それぞれの事業について、売上や稼働時間なども詳しく聞かれます。
私の場合、フリーランスエンジニア、フリーランスライター、オンライン日本語講師などを兼務していたのですが、オンライン日本語講師の収益がほぼなかったため、オンライン日本語講師に関する経費は一切認めてもらえませんでした。
他には、次のような質問がありました。
- どのような事業を行っていますか?
- それぞれの事業について、いつから事業を始めましたか?
- 過去に行っていた事業はありますか?どんな事業ですか?
- それぞれの事業について、主な取引先はどこですか?取引先の詳細についても教えてください。
- 事業の売上はどのように発生していますか?どの口座に振り込まれますか?
売上に関する質問
売上についても、細かく聞かれます。複数の事業がある場合、それぞれの事業ごとに細かい質問があります。例えば、下記のような質問ですね。
- 売上はどのように管理していますか?(帳簿、請求書、領収書の有無)
- 現金売上とクレジット売上の比率は?
- 他の方法(Paypal等)で売上が入金されていないですか?
- 現金での売上はどのように記録していますか?
- 売掛金(未回収の売上)はどのように管理していますか?
経費に関する質問
経費については、仕事目的の経費なのか、私用の経費なのかを判断するために、いろいろな質問をされます。
自分では仕事目的だと思っていても、それが認められないこともよくあります。私の場合、将来的に農業をやりたいと思っていたので、種を購入したり、貸農園を借りたり、農業起業セミナーを受けたり、いろいろ実験を行っていたのですが、それらの経費は一切認められませんでした。理由は、収入につながっていないからです。
収入につながっていなくても、経費として認められることもありますが、農業の場合は、家庭菜園(私用)と判断される可能性が高いようです。
また、経費については、下記のような質問を受けました。
- どのような経費を計上していますか?
- 経費の証拠(領収書、請求書、契約書など)はありますか?それを見せてください。
- 事業とプライベートの支出はどのように区別していますか?
- 家事按分(自宅を事務所にしている場合の光熱費・家賃の按分)はどう決めましたか?
外注費に関する質問
外注費については、外注の実態があるかどうかの観点で、さまざまな質問があります。
まず、誰に外注しているのかという点ですが、外注先との契約書、請求書があれば一番よいです。ただ、個人事業主の場合、口頭で「これをいつまでにやっておいて」と伝え、現金で渡しているケースもよくあると思います。
私も、そんな感じで、年間100万円くらいの外注費を計上していました。しかし、口頭での指示、現金渡しだったので、それを証明するのに非常に苦労しました。
まず、いつ、誰に、何を外注したのかを、エクセルで表にしました。そして、外注先リストを作り、外注先の連絡先も明記しました。そのうえで、税務調査官に、「反面調査をしていただいても構いませんよ」と毅然とした態度で伝えたところ、やっと半額(50万円)だけ認めてもらえました。
外注の証拠(納品書、請求書、振込履歴など)がないと、本当に苦労します。みなさんも外注する場合は、こうした証拠を残しておき、現金ではなく、振り込みで支払うようにしましょう。
預金・現金管理に関する質問
預金については、まず、全ての銀行通帳を開示するように言われました。私の場合、海外に滞在していたこともあったため、海外の口座についても、執拗に聞かれました。
海外口座については、口座番号やパスワードを全て忘れてしまい、残高もほとんどないため、自分では気にもしていなかったのですが、税務調査官としては看過できないことだったようです。実際、海外口座を使って脱税しているケースが多いからだと思われました。
その他、下記のような質問があります。
- 事業用とプライベート用の口座は分けていますか?
- 売上代金はどの口座に入金されていますか?
- 現金の管理はどのようにしていますか?
- 事業用の資金と個人の資金を混同していませんか?
確定申告に関する質問
確定申告の未申告や過少申告がある場合、その理由について聞かれます。
未申告の場合は、単に、面倒だったとか、忙しかったからという回答で構いません。要は、脱税しようという意図は全くなかったことをアピールしましょう。そして、反省の態度を示します。余計な言い訳は不要です。とにかく、反省していること、次からはきちんと申告することを伝えましょう。
過少申告の場合は、ちょっとやっかいです。正直に伝えたほうがよい場合もありますし、正直に伝えると誤解して解釈される場合もあります。
なぜ、過少申告をしてしまったのか。その経緯や理由について、税務調査官は執拗に聞いてきます。
もし、脱税の意図があったのなら、正直に話してしまったほうが、調査官の心証がよくなる場合もあります。心証がよくなれば、過少申告加算税はかかっても、重加算税(悪質性があると判断されたときにかかる税)まではかからないことがあるからです。
このあたりは、税理士さんと相談しながら決めていくとよいですね。
ほかには、下記のような質問があります。
- 申告内容はどのように作成しましたか?(税理士に依頼したか、自分で作成したか)
- 申告書の記載内容と実態に相違はないですか?
- 他には申告漏れや誤りがないですか?
その他の質問
税務調査では、ほかにもいろいろな質問を受けます。根ほり葉ほり聞かれると思います。プライベートな質問も結構あります。
特に、最終学歴については、よく聞かれますね。
税務調査と関係ないと思うのですが、税務調査官にとってはそうではないようです。ある税理士さんから聞いた話なのですが、学歴を聞く目的は、東大卒かどうでないかを知りたいからだそうです。
東大卒の場合、官公庁に多くの同級生や先輩、後輩がいます。当然、国税局にもいるでしょう。そうしたネットワークを使って、裏で動く可能性がないかどうかを知っておきたいそうです。
税務調査は法律に基づいて公正に行われることになっていますが、人間が調査する以上、こうしたしがらみはあるみたいですね。
この記事を書いた人 フリーランスエンジニア 目黒剛