このページでは、税務調査の流れ、国税調査官から聞かれること、言ってはいけないことなどをまとめました。私の失敗談も少し紹介していますので、参考にしてください。
個人事業主の税務調査の流れ
個人事業主の税務調査の一般的な流れは次のようになります。実際には、担当する国税調査官によって、細かいところが異なりますが、おおむね下記の流れで進みます。
1. 税務署からの電話
税務調査は通常、事前に電話で通知されます。突然、税務署から電話があります。この時、税務調査ですとは言われません。
私の場合、「〇年の決算について、お聞きしたいことがありますので、来週のどこかでお伺いしたいのですが。。。」と言われました。
ですので、最初は税務調査だと気づかず、普通に対応して、アポイントを取ってしましました。これは大きな失敗でした。
本当なら、その電話で日程を確定するのではなく、税理士さんに相談する(税理士がいない場合は税理士を探す)、自分で調べるなどの対策をしたほうがよいですね。
2. 調査の準備
税務署から電話がかかってきたら、準備することがいくつかあります。
まず、自分で税務調査に対応するのか、税理士にサポートを依頼するのかを考えましょう。
それぞれのメリット、デメリットを書き出すとよいですね。一般的には下記のメリデリがあります。
メリット | デメリット | |
自分で対応する | 費用がかからない
税務署が確定申告書を作成してくれる |
対応を間違えると、重加算税がかかってしまう |
税理士に依頼する | 税務調査のアドバイスを受けられる
税務調査に立ち会ってもらうことができる |
費用がかかる(最低でも20万円以上) |
そして、税務調査官が自宅や事務所に来る前に、下記の書類を用意しておきましょう。時系列で整理しておくのがベストですが、年ごとに段ボール箱などに入れておくだけでもよいかもしれません。
- 領収書
- 請求書
- お役様との契約書
- 仕事で使っている銀行の通帳(記帳しておく)
- その他関連書類
3. 現地調査
税務調査は通常、会社や個人事業主の事務所で行われます。
私の場合、事務所を借りていたので、事務所に直接来られました。来客用駐車場がなかったので、近くの空き地に止めていいですよと言ったのですが、徒歩10分のところにあるコインパーキングに止めていました。
調査官が直接訪問し、準備された資料や帳簿を確認します。調査の範囲は、一般的な税務処理から特定の取引に関する詳細な確認まで多岐にわたります。
通常、1回の訪問で終わることが多く、所要時間は2~6時間です。
ただ、対象年数が多い場合(直近5年間の調査)や、売上が数千万円以上の場合は、複数回の訪問調査があります。
4. 質問・確認
調査中、税務署の調査官は納税者や会計担当者に対して質問を行います。これにより、不明点や疑問点を明確にし、必要に応じて追加の書類や証拠を求めることがあります。
私の場合も、根ほり葉ほり聞かれました。仕事のことだけでなく、出生地や出身大学、趣味、交友関係など、ありとあらゆる質問がありました。
時々、かちんと来るような質問もあります。税務調査官は、相手をわざと怒らせて本音を引き出そうとすることもあるので、その策略に引っかからないようにしましょう。
具体的な質問については、別の記事でも解説していますが、一般的には下記のようなことを聞かれます。
- 事業の開始時期・開業届の提出はいつしましたか?
- 過去に税務調査を受けたことがありますか? その時の指摘事項は改善されていますか?
- 売上の計上漏れはありませんか?
- 現金売上をどのように管理していますか?
- 売上の入金と帳簿の記録は一致していますか?
- 売上に対する請求書・領収書はすべて保存していますか?
- 取引先との契約書や取引記録を確認できますか?
- 事業と関係のない経費はありませんか?
- 家事関連費(自宅の家賃・水道光熱費・車両費など)の按分方法は?
- 接待交際費の詳細(誰を何の目的で接待したのですか?)
- 経費の領収書・レシートはすべて保存していますか?
- 仕入れの証拠(納品書・請求書など)はありますか?
- 事業用とプライベート用の銀行口座は分けていますか?
- 事業用口座にプライベートの入出金が混ざっていませんか?
- 現金の管理方法(売上の入金や経費の支払い)はどうしていますか?
- 銀行口座の残高と帳簿の数字は一致していますか?
- 帳簿(仕訳帳・総勘定元帳)はどのように作成していますか?
- どの会計ソフトを使用していますか?
- 帳簿の記録はいつ・どのタイミングで行っていますか?
- 書類の保存方法はどうしていますか?(紙・データどちらか)
- 従業員に給与を支払っていますか? その給与計算はどのようにしていますか?
- 源泉徴収の処理は適切に行っていますか?
- 外注費と人件費の区分は適正ですか?(実態は従業員ではないか?)
- 外注先への支払いに関する請求書や契約書はありますか?
- 課税売上と非課税売上の区分は適正ですか?
- 仕入税額控除を適用するための帳簿・請求書は揃っていますか?
- インボイス制度への対応はどうしていますか?
5. 調査結果の説明
調査が終了すると、税務調査官は調査結果を納税者に説明してくれます。通常は、修正決算書(修正確定申告書)を見ながら説明があります。
そして、税務調査で発見された問題点や疑義が報告され、納税者はこれに対して意見を述べることができます。また、調査結果や追徴課税に納得がいかない場合、国税不服審判所などに対し、納税者は異議申し立てを行うことができます。ただ、実際は、その意義が認められることは少ないでしょう。
状況にもよると思いますが、私の場合、時間がもったいなかったので、素直に認めました。
6. 修正申告または追徴課税
調査の結果、申告内容に誤りや不足があった場合、追徴税や加算税が課されます。
これらの税金は、原則、即時に納付する必要があります。もし、納税額が高額になり、すぐに納付できない場合、税務署との個別相談になります。たいていの場合は、少しの猶予をもらうことができます。
なお、個人事業主が税務調査を受けた後、すぐに納付すべき税金は、所得税と消費税です。
その後、1カ月後くらいに、事業税、住民税の納付書が届きます。
また、同時期に、国民健康保険の納付書(加算された納付書)が届きます。
7. 納税
最終的に修正申告や追徴税が確定した場合、その金額を速やかに納税します。納税の期限や方法についても税務署から指示があります。
税務調査を受けて思ったこと
税務調査は、私にとって、非常にストレスがかかりました。生まれて初めての税務調査だったので、緊張してしまったり、声を荒げてしまった時間もありました。それが結果的によかった部分もありますが、税務調査官にマイナスな心証を与えてしまった部分もありました。
税務調査官とのコミュニケーションは誠実かつ冷静に行うことが重要ですが、実際の場面では、そんなにうまく立ち回れないこともあります。
そんなとき、横に税理士がいて、フォローしてくれたり、時には叱ってくれたりしたのは、良かったです。その時は、「お金を払って雇っている税理士なのに、どっちの味方なんだ」を腹を立てましたが、結果的には、適切に対応している姿勢を見せることにつながりました。
この記事の作成者 フリーランスエンジニア 目黒剛